NOTES

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スタジオについて

写真集、パンフレット、名刺DMとか紙を使った制作をある程度続けていると、最初はオーソドックスなこと一つひとつにも新鮮な驚きがあるけれど、だんだんそれだけでは物足りなくなって、いつもと違うことをやってみたくなる。
表紙を三つ折りにして重ねて、そこに穴を開けてみるとか。本文のうち数ページだけ、仕上がりサイズをあえて短くするとか。小口塗りといって、本の断面に色を入れてみるとか。挙げればきりがないけれど、そういう「ちょっとしたズレ」を入れたくなってくる。

もちろん、見た目が先に立つのはあんまりよくない。まずコンセプトがあって、何をどう見せたいかがあって、それを紙や形という物理的なものに落とし込んでいくというのが理想。頭の中でぼんやりしている理想のかたちを、平面のイメージに起こして、本文や表紙の紙を選び、サイズを決め、加工や製本の方法を組み合わせていく。最終的に「このかたちだな」というところまで寄せていく。その仕様設計を携えて、印刷所に相談する。

ここまでは、とても楽しい。まだ全部、頭の中で完結しているから。

だいたい問題が起きるのは、この次。ひとつはお金の問題。紙の取り都合を考え、無駄が出ないように組んでいくけれど、金額の制約を強く意識せずに考えていると、ほぼ確実に予算オーバーする。そうなると、「これは無理だね」となって、紙を変えたり、加工をシンプルめに変えて、骨組みを少しずつ下ろしていくことになる。もしくは、「ここは譲れない」という一点に向かって、「ふんぎゃ!」という気持ちでお金を出すか。
いずれにしても、お金の話。そして多くの場合、折れさえすれば、だいたいは実現できる。

厄介なのは、そもそも実現できない仕様にぶつかったときだ。印刷物は、もともと大量生産を前提としたメディアなので、製造は基本的に機械に依存している。加工ができるかどうかも、機械次第ということが多い。そこで引っかかってしまうと、「できません」で終わってしまう。

そういうとき、ずっと「もったいないなあ」と思いながらやり過ごしてきた。
でも、よく考えると、納品しないといけないのは常に1000部単位の印刷物ではない。場合によっては多くても100部、数十部、いや数冊でもいい場合もある。

だったら、小部数は手作業で作ればいんじゃないか。でも、全部を手でやるのはさすがにしんどいし、機械でできるところは機械でやりたい。
そう考えたときに、一番しっくりきたのが、「自分のスペースに機械を入れる」という選択だった。最近のセルフパブリッシングを生業にしている作家やスタジオを見ていても、やはりそれが最適解なのだと思う。加工の途中に、ほんの少し手作業が加わるだけでも、仕上がりが少し変わったりする。手と機械のハイブリッド、とでも言えばいいのか。

新品で揃えるのはさすがに無理なので、暇なときに中古を探してはポチる。そんなことを断続的に繰り返していたら、いつの間にか印刷工房っぽくなってきた。 断裁機、製本機、折機、レーザープリンタと、リソグラフ──まだ完璧なスタジオではないけれど、「一冊つくる」ことだけを考えれば、だいたいのことはここでできる状態になってきた。「印刷も、加工も、ある程度は自分でできる」そんなスタジオに寄せていこうと思っている。

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