NOTES

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ノーベル化学賞

京都大学の北川進教授が、ノーベル化学賞を受賞した。多孔性配位高分子(PCP)という研究が評価されての受賞だ。現在は京大の特別教授だが、数年前まではアイセムス(物質・細胞統合システム拠点)の拠点長を務めていた。

お前となんの関係があるのか──という話だけど、そのアイセムスの広報冊子制作を、ささやかながら手伝っており、会社員時代から数えると、だいたい10年くらいの付き合いになる。
北川先生のPCPは、1997年の論文発表以降、その分野で大きなブレイクスルーを起こしたもので、アイセムスの中で看板中の看板といえる。毎年ノーベル賞候補として挙がっていたので、10月が近づくと「今年こそは…」という空気が漂い、部外者の自分ですら、どこかそわそわしてしまう。

サイエンスの世界は専門性が高く、とにかく理解が難しい。だから、一般の人にはなかなか届きにくい。2018年、高校生でも読めるレベルでPCPを説明できないかという企画が立ち上がり、PCPの歴史を紐解きながら解説記事を書くことになった。
テキストを書く仕事をするとき、自分なりに決めていることがある。たとえ最初は興味がなくとも、書いているあいだだけは、そのテーマの「世界一のファン」になること──だけど、PCPについては、その構えすら不要だった。
研究のユニークさ、研究内容シンプルさ、そして社会にもたらす効果や可能性を知るうちに、自然と「PCP、すげぇ……」というテンションになっていた。その熱量のまま編集したので、作業は意外とすんなり終わったのを覚えている。北川先生とは、取材で一度会ったきりの関係だけれど、偉ぶったところはまったくなく、いい意味で、関西の気のいいおっちゃん、という印象だった。

2018年のノーベル賞発表直前に、その内容を小冊子にまとめたが、結果は受賞ならずでガッカリした。ただ、その後、新聞や科学雑誌でPCP関連の記事を読むと、「あ、これ、たぶん俺が書いたやつ参照してるわ」とわかるものが結構あった。そういうのを見つけるたび、ひとりで誇らしくなっていた。ちなみに、その記事はいまもアイセムスのウェブに載っており、「PCP」「MOF」「多孔性配位高分子」とかでググると1ページ目の上位に出てくる。
サイエンスに関しては完全に素人だけれども、だからこそ徹底的に調べて、専門家と一般の人のちょうど中間に立つような文章が書け、結果どちらにも配慮した内容になったのではと思う。

ノーベル賞は、研究成果が発表されてすぐにもらえるものではない。iPS細胞のような例外を除けば、研究成果が出てから20年、30年経ってようやく、という世界だ。膨大な時間と、数えきれない人が関わっており、受賞にいたる大河の一滴なれた(かもしれない)ことはただただ、光栄だなと思う。

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