NOTES

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リソグラフについて

10ヶ月ほど前に、リソグラフをスタジオに導入した。
リソグラフは印刷機の一種で、よくあるゼロックスのコピー機とは少し違う。ドラムと呼ばれるカラーローラーを使って、インクを紙に直接転写しながら、素早く、印刷物を量産できる機械だ。分類としては孔版印刷になる。

わかりやすく言えば、シルクスクリーンに近い。穴を開けた版の上にインクを載せて、スーッとすいていく、あの感じ。向こうは完全に手作業で、こちらはそれを機械でやっている、という違いがある。理屈で説明するより、実物を見てもらったほうが早いタイプの印刷だと思う。

リソグラフの存在を知ったのは、たしか7年ほど前。「デザインのひきだし」の特集で、リトルプリントをテーマにした号に、レトロ印刷JAMさんが制作したリソグラフの見本帳が付いていた。「なんか変わった印刷があるのね」と思ったのが最初だった。当時は強く惹かれたというより、頭の片隅に引っかかった、くらいの感じだったと思う。

紙媒体の制作を続けていると、オーソドックスで、リーズナブルで、失敗が少ない方法というのはだいたい決まっている──というのがわかる。この条件ならこの紙、この部数ならこの印刷、という具合に。でも、そうやって無難な選択を重ねていくと、だんだん少しだけ違うことをしたくなる。

たとえば、色はその一つだと思う。通常のカラー印刷はCMYKの4色で成り立っているけれど、それでは出ない色がある。金、銀、蛍光色、白。いわゆる特色と呼ばれるものだ。印刷所に頼めば校正で見せてもらうことはできるけれど、仕上がりを見るまでに時間がかかるし、「いま見たい」という気持ちに対して、結果が返ってくる頃には、熱が少し冷めていることも多い。ゼロックスだとトナー(いわば粉)が紙の上に乗っているだけなので、紙による差もわかりにくい。

そんなことを考えていたときに、思い出したのがリソグラフだった。
カラードラムを使えば特色が刷れる。紙も大量に買わずに数枚買えばテストできる。これは便利かもしれないな、くらいの軽い気持ちだったが、製造元の理想科学に問い合わせてから気づいたら入れてしまっていた。

京都市浄土寺でリソグラフといえば、handsaw press kyotoさんがすぐ近くにある。リソを入れようと決めた頃に、一度ご挨拶に伺った。正直、こんなに近くで持つことになったら、怒られるかもしれないな、と思っていた。

結果としてはまったく逆で、店主の小田さんは、むしろ喜んでくださった。冷静に考えると、リソグラフはあまり儲かる商売ではないし、インクの種類も、経験値もhandsawさんとこちらとではまったく桁が違うし、競合になるわけないわなと。

導入したのはMF935という機種で、A3で2色同時刷りができるタイプ。ドラムはブラック、蛍光ピンク、アクア、イエローの4色。この組み合わせは、リソグラフでフルカラーで刷る際の定番であり、その通例に従った形になる。

ただ、現状はあまり使えていない。
導入から10ヶ月ほど経つけれど、リソはほぼ鎮座したままで、でっかいオブジェのようになっている。通常の仕事が忙しい、という理由をつけてはいるけれど、もしかすると、やらない言い訳を作るために仕事をしているのかもしれない。
来年はこのでかいオブジェを、ちゃんと印刷機にしよう。

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